6大ロスとは|故障・チョコ停・速度低下の分類と改善手順
6大ロスの定義から改善手順まで現場目線で解説。チョコ停と故障の境界・速度低下の計測・記録方法など、OEE改善に直結する実務ガイド。
「6大ロスは知っている。でも実際の現場でどう使えばいいのか、いまひとつ腑に落ちていない」——そんなエンジニアに向けて書いた記事だ。
研修や教科書で「6大ロスとは故障・段取り・チョコ停・速度低下・工程不良・立上がり不良の6つ」と教わっても、現場に出ると「この停止はどのロスに分類するんだ」「チョコ停と故障の境目はどこだ」という疑問が次々と出てくる。定義を知っていることと、使いこなすことは別の話だ。
この記事では、6大ロスの定義と分類はもちろん、現場でどう発生するか・どこから手をつけるかまで含めて解説する。OEEの数字をただ眺めるのではなく、改善行動に結びつけるための実務ガイドとして活用してほしい。
1. OEEとロスの関係——数値だけでは改善できない理由
OEEは「設備が本来持っている能力をどれだけ活かせているか」を示す指標だ。詳しくはOEEの基礎を参照してほしいが、計算式を簡単に振り返ると:
OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
それぞれの要素が悪化する原因が「ロス」である。OEEが下がったとき、どの要素が引っ張っているのかを特定しないと、改善策がまったく見当違いになる。
- 時間稼働率が低い → 停止系のロスが多い
- 性能稼働率が低い → チョコ停・速度低下が多い
- 良品率が低い → 不良・手直しが多い
たとえばOEEが70%の現場で、時間稼働率は95%・良品率も98%あるのに性能稼働率だけが75%だとする。この場合、故障対策や不良対策にいくら力を入れても数字はほとんど変わらない。手を打つべきはチョコ停と速度低下の2つだ。OEEという数字はゴールではなく、「どこを掘るべきか」を指し示すコンパスだと思ってほしい。
2. ロスの全体マップ——6大ロスとは何か
6大ロスは以下のように分類される。
| 分類 | ロスの種類 | 定義・典型例 | OEE影響先 |
|---|---|---|---|
| 停止ロス | ①故障ロス | 突発的な設備停止・修理・部品交換が必要な状態 例:モーター故障、センサー断線、機械的破損 |
時間稼働率 |
| 停止ロス | ②段取り・調整ロス | 品種切替・治工具交換・条件調整による停止時間 例:金型交換、品番切替、初品確認 |
時間稼働率 |
| 速度ロス | ③チョコ停・空転ロス | 短時間で繰り返す停止・空転。オペレーターが即対応可能 例:材料詰まり、センサー誤検知、ワーク引っかかり |
性能稼働率 |
| 速度ロス | ④速度低下ロス | 設備が動いているが理想サイクルタイムより遅い状態 例:老朽化による摩耗、保守的な速度設定 |
性能稼働率 |
| 不良ロス | ⑤工程不良ロス | 定常生産中に発生する不良・手直し品(手直し工数も含む) 例:寸法不良、外観不良、手直しによる再加工 |
良品率 |
| 不良ロス | ⑥立上がり不良ロス | 生産開始直後・段取り後の条件不安定期に発生する不良 例:朝一番の初品不良、品種切替直後の不安定 |
良品率 |
さらに実務では「計画停止」をこれらとは別に扱うことが多い(後述)。
6大ロスは**TPM(全員参加の生産保全)**の考え方から生まれたもので、設備効率を落とす要因を網羅的にカバーするよう設計されている。重要なのは、「この6つ以外のロスはない」という前提で考えることだ。現場で「原因不明の停止」が出てきたら、まずこの6分類のどこに当てはまるかを議論するところから始めよう。
3. 計画停止——OEEの分母からどう扱うか
計画停止は6大ロスには含まれないが、OEE計算の前提として必ず整理が必要なため、あわせて解説する。
計画停止とは、あらかじめ予定されていた非稼働時間のことだ。具体的には以下が該当する。
- 昼休み・始業前・終業後の非稼働時間
- 定期点検・法定点検
- 計画的な教育・訓練
- 需要の都合による計画停止(注文がないため止める、など)
OEEを計算するとき、計画停止は「操業時間」から除外するのが一般的だ。分母に入れてしまうと、昼休みが長い工場ほどOEEが低く見えてしまい、改善の比較ができなくなる。
ただし、「どこまでを計画停止とするか」は現場ごとにルールを決める必要がある。段取り替えや保全作業を計画停止に入れるか入れないかで、OEEの数値が大きく変わってくる。現場でよくある失敗が「定期点検は計画停止、でも突発保全は…どっちだっけ」という曖昧な運用だ。後から計算方法を変えると過去データとの比較ができなくなるため、社内で定義を統一することが先決だ。可動率・稼働率との違いでも触れているが、言葉の定義のズレが後々の混乱を招く最大の原因になる。
4. 段取り・調整ロス——削減の考え方
段取り・調整ロスは6大ロスの中で「計画的に発生する停止」という点で他のロスと性格が異なる。故障のように突発ではなく、品種切替のたびに必ず発生するため、「仕方ない」と放置されがちだ。しかし現場によっては1シフトの稼働時間の20〜30%を段取りが占めているケースもあり、改善余地が大きい。
内段取りと外段取りの定義
段取り改善の第一歩は、段取り作業を「内段取り」と「外段取り」に分けることだ。
- 内段取り:設備を止めなければできない作業(金型の取り外し・取り付け、センサー位置の調整など)
- 外段取り:設備を動かしたまま事前に準備できる作業(次品番の治工具準備、材料の手配、設定値の確認など)
現状の段取り作業を観察すると、「本来は外段取りにできるのに設備を止めてからやっている」作業が必ず見つかる。内段取りを外段取りに転換するだけで、設備停止時間を大幅に短縮できる。
SMEDの基本概念
SMED(Single Minute Exchange of Die)は、段取り時間を1桁分(9分以内・一桁台の分数)に短縮することを目標とした改善手法だ。「段取り時間を半減する」考え方の核心は次の3ステップにある。
- 現状の段取り作業を全てビデオ撮影または観察でリストアップする
- 各作業を「内段取り」か「外段取り」かに仕分けする
- 内段取りの中で「標準化・治具化・並行作業」によって時間を短縮できるものを特定する
SMEDは「段取りをなくす」のではなく、「段取りを設備停止前に移す・短くする」手法だ。まず内/外の仕分けから始めることが改善の第一歩になる。
(短縮)
段取り時間の短縮はOEEの改善だけでなく、タクトタイム計算の稼働時間確保にも直結する。段取り時間をラインの稼働時間からどう扱うかについてはタクトタイム計算式とラインバランス設計も参照してほしい。
5. 故障ロスとチョコ停の違い——定義・時間基準・記録の境界線
停止ロスの中でも、現場でいちばん定義が曖昧になりやすいのが「故障」と「チョコ停(短時間停止)」の境界だ。
故障ロス
設備が突発的に停止し、修理や部品交換が必要な状態。復旧に一定時間以上かかるものを指す。現場によっては「5分以上」「10分以上」を故障と定義していることが多い。
現場でよく見られるのは、「同じ場所が繰り返し壊れる」パターンだ。一度修理しても根本原因が解消されていないため、1〜2週間後に同じ箇所が再故障する。このような「再発故障」はMTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修復時間)を記録しておくと傾向が見えてくる。MTBFが短ければ「壊れやすい部位」の特定に、MTTRが長ければ「修理手順の標準化」に直結する。故障ロス対策の出発点は「どの設備の・どの部位が・どのくらいの頻度で壊れているか」を把握することだ。
チョコ停・空転ロス
どちらに分類するかは社内ルールで統一することが最優先だ。チョコ停を時間稼働率に算入する現場もあれば、性能稼働率として扱う現場もある。計算方法が現場ごとにバラバラだと、工場間比較やOEEの経年推移が意味をなさなくなる。導入初期に必ず定義を決めておこう。
チョコ停は設備がアラーム停止し、オペレーターがすぐに復旧できる短時間停止。材料詰まり・センサー誤検知・ワーク引っかかりなどが典型例だ。空転ロスは設備が正常に動いているにもかかわらず、ワークが流れていない状態(ワーク待ち・空送りなど)を指す。どちらも性能稼働率に影響するロスとして同じカテゴリに分類される。
チョコ停は1件あたりの停止時間が短いため「たいしたことない」と思われがちだが、1シフト中に50回発生すれば1回2分でも100分のロスになる。さらに厄介なのは、オペレーターが慣れてしまい「いつものこと」として記録しなくなることだ。積み重なると大きなロスになるという認識を現場全体で共有することが重要だ。
チョコ停の記録手段
チョコ停を把握するには記録の仕組みが不可欠だ。現場の状況に応じて以下の3手段から選ぶ。
- PLCカウンターの自動集計:PLCのアラームログを自動で取得する方法。記録漏れがなく最も精度が高い。多くのPLCにはロギング機能が標準で備わっており、装置ベンダーやSIerに「SDカードに吐き出せるよう設定してほしい」と依頼するだけで対応できるケースが多い。ライン停止ボタンの設置よりコストはかかるが、大規模なシステム改造を伴うことは少ない。
- タリーシート(紙)手記入:オペレーターが停止のたびにシートに正の字を書く方法。導入コストはゼロだが、記録漏れ・抜けが最大の課題。まず「記録する文化」を作る入口として有効。
- ライン停止ボタンの集計:停止ボタンやコードスイッチの押下回数をカウントする方法。PLCほど詳細ではないが、既存設備への追加が比較的容易。停止理由の特定には別途オペレーターの記録が必要。
※暖機ロス(設備起動後に安定稼働するまでの時間)はチョコ停ではなく、立上がりロスに分類する。計画的に発生するものであり、突発停止のチョコ停とは性質が異なる。
境界の引き方
| 項目 | 故障ロス | チョコ停・空転ロス |
|---|---|---|
| 復旧に必要な作業 | 修理・部品交換が必要 | オペレーターが即対応可能 |
| 記録の主体 | 保全担当 | ライン担当・オペレーター |
| 一般的な時間基準 | 5〜10分以上 | 5〜10分未満 |
| 原因の追いやすさ | 比較的明確 | 多数・多様・記録が漏れやすい |
よくある失敗は、「5分以内の停止はオペレーターが直してしまって記録に残らない」というケースだ。チョコ停は件数が多いため、記録していないと「なぜそんなに性能稼働率が低いのか」が全く分からなくなる。チョコ停の記録はOEE改善において最重要課題のひとつだ。
6. 速度低下ロスの計測——一番見逃されやすいロス
速度低下ロスは「設備は動いているが、本来の速度より遅い」状態だ。設備が止まっていないため、パッと見では問題があると気づきにくい。だからこそ、6大ロスの中で最も見逃されやすい。
現場で「うちの設備は問題なく動いている」と言われながらOEEが低い場合、たいてい速度低下が隠れている。「昔からこの速度でやっている」という慣習的な運用が、ロスを見えなくしているケースが非常に多い。
速度低下の原因例
- 老朽化による機械的なガタつき・摩耗
- 加工条件が保守的すぎる(「昔からこの速度でやっている」)
- 不良が出るのを恐れて意図的に遅らせている
- 前後工程のバランスが崩れており、わざと遅らせている
どこから手をつけるか
速度低下対策の第一歩は「理想サイクルタイムを明文化すること」だ。設備メーカーのスペックシートや設備立ち上げ時の試験成績書を掘り起こして、本来の能力値を確認する。スペックシートが存在しない場合は、同型機の標準サイクルタイムか過去最良実績を基準にする。次に実績サイクルタイムとの差を計算し、どの設備でどれだけの速度低下が発生しているかを数値で示す。「昔からそうだから」という議論を封じるには、数字で見せるしかない。
計測の考え方
速度低下を計測するには「理想サイクルタイム」が必要だ。
速度低下ロス(分)=(実績サイクルタイム − 理想サイクルタイム)× 生産数
実績サイクルタイムはシフト全体の平均値を使う。
理想サイクルタイムは、設備が設計通りの最高速で動いたときの1個あたりの時間だ。これを設定していない現場では、速度低下ロスを定量化できない。導入時によくある問題は「理想サイクルタイムが不明」というケースだが、その場合は同型機の標準サイクルタイムか過去最良実績を基準にすることで対処できる。装置別OEEの考え方でも触れているが、設備ごとに理想値の設定方法が異なるため注意が必要だ。
7. 不良・手直しロスと「良品率」への影響
不良ロスは「生産したが良品にならなかった」時間・数量のロスだ。OEEの「良品率」に直接影響する。
工程不良ロス
定常生産中に発生する不良・手直し。スクラップになった場合だけでなく、手直しに使った工数もロスとして計上するのが本来の考え方だ。手直しは「ゼロにはならないから」と許容されがちだが、その時間は新たな良品を作れたはずの時間であり、れっきとしたロスである。
工程不良の改善アプローチは「どの工程で・どの品番で・どの不良モードが多いか」を層別することから始まる。全体の良品率が低いと言っても、特定品番の1工程に集中していることが多い。パレート分析で上位の組合せを特定し、そこに集中的にリソースを投入するのが効率的だ。
立上がり不良ロス
生産開始直後(段取り替え後・朝一番など)に発生しやすい不良。設備の暖機や条件安定に時間がかかる場合に多い。工程不良と分けて管理することで、「段取り後の不安定期間」を可視化できる。
立上がり不良は「仕方ない」と放置されがちだが、段取り手順の標準化・暖機条件の見直し・試し打ち個数の最適化などで改善できる余地が大きい。まず「段取り後に何個目から良品が安定するか」を計測することを習慣にしよう。
良品率の計算
良品率 = 良品数 ÷ 加工数(生産した総数)
手直し後に良品になった場合でも、加工数にはカウントするが良品数には含めないのが正しい扱いだ(一度でも不良になったものは、最終的に良品になってもロスとして記録する)。
手直し品を良品にカウントしている現場もあるが、そうすると不良の実態が隠れ改善機会を見逃すリスクがある。OEEの本来の考え方では、一度でも不良になったものは手直し後も良品数に含めない。
8. 6大ロスの記録と見える化——集計・パレート分析・改善優先順位
故障
段取り
チョコ停
速度低下
工程不良
立上り
6大ロスを改善に結びつけるには、記録・集計・優先順位付けの仕組みが不可欠だ。
ロス記録のポイント
- 記録の粒度を決める:停止1回ごとに記録するか、シフト単位でまとめるか。チョコ停は1件ずつ記録するのが理想だが、件数が多い現場では「チョコ停合計 ○分・○件」という形でも構わない
- 原因コードを設定する:「故障」「チョコ停」「段取り」など、コードを決めておかないと後で集計できない
- 担当者を明確にする:故障は保全担当が記録し、チョコ停はオペレーターが記録する、という役割分担をはっきりさせる
見える化のコツ
集計結果はパレート図で可視化するのが定番だ。「どのロスが全体の何%を占めているか」を見ると、改善の優先順位が一目で分かる。
よくある間違いは「件数の多いものから改善する」ことだ。チョコ停は件数が多くても1件あたりの時間が短いことがある。時間(分)ベースのパレートを作ることで、本当に大きなロスが見えてくる。
改善優先順位の考え方
- 時間が長い × 再現性がある → 最優先で改善
- 時間は短いが件数が多い → チョコ停対策(センサー感度・清掃頻度など)
- 散発的で原因が多様 → まず記録精度を上げることが先(原因コードを5〜7種類に絞り、記録の負荷を下げるところから始める)
最初から完璧な記録システムを作ろうとすると導入が頓挫しがちだ。まずはシンプルなフォーマットで運用を始め、「記録する文化」を根付かせることを優先しよう。
よくある質問(FAQ)
Q: 故障とチョコ停の違いは何ですか?
最大の違いは「復旧に何が必要か」という点だ。故障は修理・部品交換が必要で、保全担当が対応する。チョコ停はオペレーターがその場で即復旧できる短時間停止を指す。時間の目安は「5〜10分」で境界を引くことが多いが、正確な基準は現場ごとに統一することが重要だ。
Q: 6大ロスはどうやって記録すればいいですか?
まず「PLCカウンター自動集計・タリーシート手記入・停止ボタン集計」の3手段から現場に合うものを選ぶ。完璧なシステムより「記録する文化」の定着が先決なので、導入初期はタリーシートのような低コストな手段から始めるのが現実的だ。原因コードと記録担当者(故障は保全・チョコ停はオペレーター)を最初に決めておくことが集計精度を左右する。
Q: 段取りロスを短くするにはどこから手をつければいいですか?
まず現状の段取り作業を全て観察・リストアップし、「設備を止めなければできない作業(内段取り)」と「事前に準備できる作業(外段取り)」に仕分けすることから始める。内段取りを外段取りに転換するだけで停止時間を大幅に削減できるケースが多い。ビデオ撮影で作業を可視化すると、「本来は外段取りにできるはず」の作業が必ず見つかる。
まとめ
6大ロスは、OEEという結果指標を「行動できる情報」に変換するための分類体系だ。定義を知っているだけでは不十分で、「どのロスが現場で支配的か」を特定し、優先順位をつけて手を打つことが求められる。
- 計画停止はOEEの分母から除外するが、社内での定義統一が先決
- 故障とチョコ停は時間基準を決めて明確に区別する。チョコ停の分類(時間稼働率 / 性能稼働率)も社内で統一しておく
- 速度低下ロスは設定していない現場が多く、理想サイクルタイムの設定が出発点
- 手直しもロスとして記録し、良品率の分子には含めない
- 記録は件数ベースではなく時間ベースで集計してパレート分析する
- 段取りロスは内段取り/外段取りの仕分けから改善を始める
OEEの数値を追いかけるだけでなく、6大ロスの構造を頭に入れた上で「今週はどのロスに手を打つか」を意思決定できるエンジニアを目指してほしい。6大ロスは分析ツールではなく、現場を動かすための言語だ。